2018/02/15
FTRのキャブレターオーバーホール手順を簡単に解説してみます。
前回はキャブレターの取り外しについて記事にしましたが、取り外し・取り付けどちらも数回やっていくうちに次第に慣れていき、10分ほどで出来るようになると思います。
触っているだけで楽しくなるキャブレター
初めてキャブレターをバイクから取り外し、自宅に持ち込んで掃除をしたり磨いたりしつつ、ひとつひとつの部品が何の役割を担っているのかや、キャブレター自体の構造を少しづつ理解してきた時の楽しさは格別でした。
もちろんひと通りのオーバーホールを終えたあと、再取り付をしてからエンジンが掛かってくれるその瞬間まで不安もありました。ただ、手間をかけた分もあるのかエンジンが掛かった時の喜びはとても大きかったです。
まずはフロートを開けてみる
それでは、ここから私なりのキャブレターのオーバーホール手順を画像とともに載せていきます。最初に、フロート室を開けるために下図の4か所のネジを外します。
説明が前後してしまいますが、キャブレターを分解する時は写真に写っている白いトレーの上で作業するようにしています。これ、百均の商品です。ネジなどの小さな部品もどこにあるのか分かりやすく、落としてしまったとしても見つけやすいので、シンプルなホワイトを使っています。
このネジを外して蓋を持ち上げると、下図のようにフロート室が現れます。
左手に持っているものがフロート室の蓋の内側で、右側のオレンジ色のものがフロートです。このフロート室に、タンクからのガソリンが少しづつ流れ込みます。
フロートは流れ込んだきたガソリン量によって浮き輪のように浮き沈みし、ニードルバルブというパーツを同時に上下させています。
このニードルバルブが上下をすることで、ガソリンの流れ道を塞いだり開けたりと、常にガソリン流入量を調整する役目をしています。
長い間乗っていないと、左手に持っている蓋の内側にガソリン汚れが滞留していたりもするので、キャブクリーナーを吹き付けて綺麗にします。
蓋のふちを囲むように付いている黒色のパッキン(Oリング)も経年劣化するものなので、痛んでいるようであれば交換しましょう。
※Oリングなどのゴムや樹脂製品にキャブクリーナーを吹き付けると、ゴムの硬化原因などにもなります。必ずゴム製品などを全て取り外した上でキャブクリーナーを吹き付けます。
次に、上図の赤矢印箇所に入っているフロートを固定しているピンを押し出し、フロート本体を外します。
ピンは細い針金や爪楊枝などを使って簡単に押し出すことができます。
ピンを外すと、フロートと一緒に前述のニードルバルブも取れます。フロートを外した際に、ポロっと落ちることが多いので見失わないよう注意しましょう。
フロートが劣化や破損をしていると上手く浮き沈みができません。また、このニードルバルブに汚れが付着していると、ガソリンの流入を上手く塞ぐことができなくなったりします。そうなると、フューエルホースからのガソリンが常にフロート室に流れ込み、オーバフロー(キャブレターからガソリンがあふれ出してしまう現象)の原因になったりもします。
ですので、ニードルバルブにガソリン汚れなどが付着していたら綺麗に拭き取りましょう。
メインジェットとスロージェットを取り外してみる
下図の赤色だ円で囲んでいる箇所に付いている、メインジェットとスロージェットをマイナスドライバーで取り外します。どちらも真ちゅう製なので、なめないように気を付けましょう。
指にはさんでいる2本のうち、左側の短いものがメインジェット、右側の長いものがスロージェットです。
スロージェットに映っている小さな2つの穴。ここから少しづつガソリンが出て、エアフィルターから取り込まれてくる外気と混ざって混合気となり、エンジンへ吸い込まれていきます。この穴が汚れのためにふさがってしまっているとエンジンの回転を不安定にさせる要因になるので、キャブクリーナーを吹きつけた後は、極細の針金で穴の掃除もしておきます。
こちらメインジェットの土台部分もペンチで外すと、スロージェット同様に小さな穴があるので同じようにキャブクリーナーからの針金掃除をします。
ダイヤフラムとジェットニードルを取り外す
次にフロート室とは逆側、キャブレター上部にある蓋を開けてダイヤフラムとジェットニードルを取り外します。
FTRの場合は上図赤丸の2か所のネジで留められていますが、他車のキャブレターでは4本のネジで留まっていたりものもあるようです。
この蓋、中のバネを抑えている状態となっているので、開ける時は下図のように余っている指で蓋を抑えつつネジを回して外したほうが安全です。(そんなに勢いよく飛び出してはきませんが、反動で蓋に付いていたネジが何処かへ行ってしまう可能性もありそうなので。念のため。)
キャブレターのオーバーホール完了時、蓋を閉める時もこのような感じで押さえながらネジを締め付けていきます。
この蓋を外すと、下図のようなタイムボカンシリーズに出てくる壊れちゃったメカ状態のような絵になります。
このバネの下部分にある薄い膜のような黒いゴム部品が「ダイヤフラム」です。ダイヤフラムを外すと、一緒にジェットニードルも外れます。
このダイヤフラムは、ジェットニードル部分を上下させるためにキャブレター内部の外圧と内圧とを遮る役目を担っています。キャブレター内で、ガソリンと混合させる外気流入量を増やしたり減らしたりの役割をしているので、このダイヤフラムに穴が開いていたりすると、バランスの良い混合気を生成することができずに加速の伸びが落ちる(=吹けが悪い)原因になったりもします。
大きな「きくらげ」みたいですね・・・。以前、どなたかのブログで拝見した記憶があるのですが、このダイヤフラム純正部品をオーダーすると5,000円ほどのようで、結構なお値段です。これらのゴムや樹脂製品を外した状態で、キャブクリーナーをあらゆる箇所に吹き付けてしばらく放置しましょう。
初めてのキャブオーバーホール時の思い出
初めてキャブレターのオーバーホールを行った後、FTRの最高速度が70kmになってしまったという思い出があります。まるでリミッターが効いているかのごとく、70kmで頭打ちになってしまうという・・・。
走りだしの最初こそは原因不明だったのですが、オーバーホール後の初回走行でのことだったので、自身の作業に原因があることは確かでした。調子を取り戻すための手入れのつもりが、逆に調子を落とさせてしまうなんて・・・と落胆したものでした(笑)
落ち込んでいても何も変わらないので、仕方なく再度キャブレターを外し、ひとつひとつのパーツを確認していったところ、上の画像のきくらげ(ダイヤフラム)の一部分がめくれた形になってしまっていることが分かりました。負圧が中途半端になってしまうことから、ニードルジェットが正常に持ち上げらなかったことが原因のようです。ダイヤフラムを再びピッタリと収め直したところ、最高速の落ちも解消されました。
いつも使用しているキャブクリーナーを紹介
キャブクリーナーはKURE(呉工業) クリーナーキャブ (420ml)を使っています。カーメンテナンス用品や掃除道具を扱っているホームセンターであれば、ほぼ何処でも売られていると思います。オイル関連の汚れを落とすためなのか、このキャブクリーナー自体のアルコール臭もかなり強めなので屋外で扱うことをおススメします。
また、クリーナーキャブ右隣にも映っていますが、キャブレターのオーバーホールと合わせて使用しているのがワコーズのフューエルワン (燃料添加剤)になります。せっかく綺麗にしたキャブレター内部の状態を少しでも長持ちさせたいので。ただ、毎回の給油に必ず添加している訳ではなく、季節変わりのタイミングなどに少しづつ使用しています。
メーカー公式では「燃料30~60リットルに対して、この1本を投入。30リットル未満の場合には、その1%を越えない量を投入。」とあります。FTRの場合は満タン7リットルなので、1回に混ぜる量は単純計算で70mlになります。ペットボトルのキャップが約7.5mlなので、このフューエルワンのボトルキャップ1杯分くらいを入れています。
パイロットスクリュー調整もお忘れなく
キャブレターのオーバーホールや、ジェット類を交換した際は併せて「パイロットスクリュー調整」もしておきましょう。
パイロットスクリューは、アクセル全閉時にスロージェットから出る燃料に対する、外気混入量の調整役割をしているものです。このスクリューを締めるとアイドリング時、スロージェットからのガソリン量に対する空気量が少なくなるので、必然的にアイドリング時のエンジン回転数が落ちます。その反対に、緩めていくと空気量は大きくなりアイドリング時の回転数は上がっていきます。
上の画像、赤矢印の先にあるネジ頭だけ見えているものが「パイロットスクリュー」です。
このパイロットスクリュー、ネジ頭はなぜか「D型」をしています。ですので、D型ドライバーを使わないと調整が出来ません。
これ、たかだかパイロットスクリュー1本を締めたり緩めたりするのに使うだけなのですが1,500円以上もします。そこまで頻繁に調整することはないパイロットスクリュー調整のためにこのお値段は、はっきり言って勿体ないです。もしもこの記事を読まれてキャブ調整に挑まれる方、(千葉県や都内東側に限定されてしまうかもしれませんが)ご連絡さえ頂ければ、機会をみていつでも無償でお貸し出しをしますです。どうぞお気軽に!
こちらのパイロットスクリュー調整方法。
- アイドリングや試走後、エンジンが充分暖まった状態ではじめる
- パイロットスクリューを完全に締め切った状態からスタート
- 少しずつ緩めていき、アイドリングが上がり切ったところがベストポジション
エンジンが暖まった状態でないと、アイドリングも不安定なままで見極めも難しいです。なので、エンジンが暖まった状態で始めます。パイロットスクリュー調整が必要になるのは、おおよそキャブレターをオーバーホールした時、もしくはジェット交換をした時になるかと思うので、試走した後がいちばん良いかもしれません。
次に、アイドリング状態のままパイロットスクリューを一度、右回しに締めきります。この時、次第にアイドリングが落ちていくのでそのままエンストしてしまう場合もあります。
そのような場合は、エンストしてしまった位置から、どれくらい締めたか(半回転なのかとか、4/3ほどなのか等)を覚えておき、再度エンジンが止まってしまうぎりぎりのところに戻してから、エンジンをかけ直して調整。
完全に締め切っているところから、2回転~2回転半緩めたところでアイドリングが最も高くなる緩め方がベストになります。締め切った状態でエンストしてしまう場合には、先ほどの「どれくらい締めたか」も含めて計算します。
これが1回転半~2回転半ほどの範囲内でアイドリングが最も高くなる状態であれば、それで調整完了です。逆に、それ以外のところでアイドリングが高くなったり、どれだけ緩めても高くならないようであれば、スロージェットの番手交換をした方が良いかと思います。
コメント
先日 FTR250を購入しました
車重も軽く 低速も力強くとても乗りやすい
バイクです しかし 最高速度100 それも
アクセルをしずかーに絞って行かなければ高速域で
咳き込みます ボホ ボホ と 悲しー
記事楽しく読ませてもらっております
by hisa 2019-07-07 8:46 AM
hisaさん、納車おめでとうございます。
FTRは本当、タフで元気で楽しいバイクです。
あと、FTRに限らずキャブ車の宿命かもしれませんが、寒冷地に行っても
ボボボボボって少しグズります笑
by ken_ken 2019-07-07 4:27 PM
初めまして。
つい最近FTRが仲間に加わった中年のお父さんです。
キャブレター清掃するにあたり、けんけんさんのこの記事が大変参考になりました。
ありがとうございました。
バイクのブログをひっそりと書いてるのですが、この「キャブレター取り外し・清掃」の記事を紹介掲
載しても良いでしょうか。
「V-MAX父ちゃんの妄想とチャレンジ」
http://blog.livedoor.jp/ryu_v/archives/42173566.html
もし不快な思いをされるのであればすぐ削除します。
私もFTRでロングツーリングを計画しています。楽しみです。
by 父ちゃん 2020-11-02 12:04 PM
コメントありがとうございます。
少しでもご参考になることができたら、嬉しいです。
V-MAX父ちゃんの妄想とチャレンジブログ、拝見させていただきました。
バイク歴もレース歴もすごいですね・・・
お遍路ツーリングは自分もいつかやってみたいと思っているので楽しみにしています!
ブログのブックマークにリンク貼らせて頂きました。
by ken_ken 2020-11-02 4:50 PM