2018/02/15
今夏の北海道・道南巡り旅は、今年に入って早々に見送ることを決めた。
そして何となく落ち着いた頃を見計らい、おおよその旅程も考えていた四国行きでさえも初夏の頃、見送ることに。
どちらもその要因は新型コロナによるもの。北海道は往復、四国は往路にフェリーを利用しようと思っていたことも大きな要素に。
このご時世、旅行から帰ってきて数日後、もしもコロナに掛かったとしたら何を言われるんだろうか。「フェリーに乗って、行ってきました」なんて言ったら、危機管理が足りないって言われるだろうなぁとか。
飲食チェーン店で見かけるプラスチック製の間仕切りも、町歩きの中でのマスク姿も。どこか何となくおかしいと思うのは自分だけだろうか。
電車内のマスクは、何となく分かる。自分もちゃんと付けてる。
ただ、ひとり町中を歩いている時でさえマスクしなければいけない程に感染力の強いウィルスだとしたら、もう、とっくに感染者だらけになっているんじゃないだろうか。
という複雑な気持ちはさておき・・・フェリーを利用しない夏休みを楽しもうと計画した、2020年・夏の長野旅記録になります。
渋温泉で、遠い昔の雰囲気を味わいたい
今回の長野、キャンプ泊はもちろんながらバイク雑誌などで気になっていた「渋温泉」と「奈良井宿」にも行ってみることに。
初日は渋温泉のお宿「玉久旅館」さんに素泊まり。
奥志賀林道も走ってみたかったが為に、お宿がある山ノ内町よりもう少し上、野沢温泉で有名な下高井郡まで北上してから下ることにした。
ところが・・・
上の赤線のような感じで山中の道を南下できる道があるのだけれど、工事による通行止めのため途中で引き返すことに・・・
来た道をまた戻り、そのまま渋温泉へ向かうことにしたのだけれども。いやぁ、この時の脱力感と言ったらもう・・・
渋温泉にて、厄除巡浴「外湯めぐり」
チェックインを済ませたあとは、受け取った巡浴手形を手にさっそく外湯めぐりに外出。
渋温泉の楽しみのひとつである、この外湯めぐり。
渋温泉の外湯(共同浴場)、一番から九番湯まで手拭いにスタンプを押して巡り終わったら高台にある高薬師さんに詣でて満願成就。九(苦)労を流し、厄除け、安産育児、不老長寿のご利益があると根強い人気があります。
渋温泉にご宿泊のお客様は、無料でご入浴をお楽しみいただけます。
渋温泉旅館組合発行「信州・渋温泉」パンフレットより抜粋
渋温泉の旅館宿泊者は、町のなかに点在する9つの共同浴場を利用できる仕組みになっている。
もうひとつの楽しみ方は、お土産屋や旅館フロントで販売されている、この手拭い(300円)を購入して、共同浴場に設置してあるスタンプをポンとひとつ、またひとつと巡った(入浴した)証を残していける。温泉版スタンプラリーと言ったら、分かりやすいかもしれない。
これは入湯と旅の良い思い出になるだとうと思い、自分もやってみました。
一番湯「初湯」
まずは一番湯から。
3人ほどで定員でしょうか。お湯加減も調度良く、千葉から長野までやってきた疲れ(と、野沢温泉で引き返すことになった、やるせない気持ち)を癒してくれます。
10分ほどで入浴を済ませ、次、二番湯いってみましょう。なにせ、1泊2日で9つの入湯が目標なので、あまりゆっくり浸かる気分になれないという・・・笑
二番湯「笹の湯」
続いて、二番湯へ。ちなみに下の外観写真の中央、「二番湯」の看板下にある台が、例の手拭いに押すためのスタンプ。
こちら二番湯は、無色透明の透き通ったお湯。
かなり高温(飛び込んだら危ないレベルの熱さ)で、なかなか浸かることが出来ない。備え付けの蛇口から冷水をざぶざぶ流し入れても、一向に冷めてくれないので、けっきょく全身浸かることは出来ず。半身浴のような感じで楽しんだ。
ちなみにお隣、女湯のほうからも冷水を流し入れる音がざぶざぶ。桶でザバザバと湯舟をかき回す音が止むことなく聞こえ、やはり熱いのは自分だけではないのだと安心した・・・。
三番湯「綿の湯」
気を取り直し、続けて三番湯!
いやぁ、ここの三番湯もかなりの高温(二番湯と同じく飛び込んだら危ないレベル)だなぁ。
またもや入浴前に冷水をざぶざぶ、浴槽を混ぜ混ぜしていて思ったけれど、入浴時間よりもお湯を整えている時間のほうが圧倒的に長い。
ただ黙々とお湯を整えている時間 = こころも整える時間と思って、集中しようではないか。こちらも二番湯同様に、ひざ下まで浸かるのが限界だった。
四番湯「竹の湯」
四番湯「竹の湯」は、今回の宿泊先「玉久旅館」に隣接している外湯。
このお湯は二番湯、三番湯ほど熱くもなく浸かりやすかった。(とは言っても、長風呂していられるほどの温度ではない)
ここまでの一番~四番湯で、約1時間ほど。さすがにノボせてきたので、外湯前にあるベンチに座ってしばし湯冷まし。
町のいたるところにベンチが設置してあるのは、きっと入浴した人々の休憩用でもあるのだろう。
そのベンチに座りながら、ちょっと考えた。
「ここまで4つのお風呂に入るのに1時間・・・。9つ全て巡るとして、残り5つをこれから廻りきれるのだろうか?」
「かと言って2,3つを明日に残したとしても、チェックアウト後に炎天下のなかバイクで走ることを考えると、朝から何度も入浴するのはシンドイぞ?」
とか、色々。
入湯のために、ここまで真剣に思いを巡らせたのはこれが人生初かもしれない。
なんてことを考えていたら程よく汗もひいてきたので気を取り直し、下駄をカラコロと五番湯へぶらり。
五番湯「松の湯」
ここでまさかの出来事が。
「工事中のためドアは開きません」
そ、そんな・・・まさか。五番湯に浸からずして、外湯巡りを満願成就したと言えるのだろうか!?
何より「九(苦)労を流し~」という願掛けがあるにも関わらず、八つしか入湯しなかったとしたら「八労」になって、言葉の掛け合わせもなにも無くなってしまうではないか。
「工事中のためドアは開きませんでした、開きませんでした、開きませんでした~」の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。もちろん「乗客に日本人はいませんでした、いませんでした。いませんでした~」のメロディで。
まぁ、1つ入らずに済ませたと言ってしまえばそれまでなのだけれども。ただ、入らずしてスタンプ押すのもなぁ。とは言え、工事中と知る前に手拭にスタンプも押してしまったので仕方ない。
きっと同じような思いになる旅行客の方はいらっしゃるはずなので、せめて五番湯のお湯をちょろちょろとホースか何かでかけ流し、お湯で手を洗えたらよかったぁとは思いました。
六番湯「目洗(めあらい)の湯」
六番湯は、かなり縦長で広く6~7人が一度に浸かれそうなほど。
そしてお湯も熱くなく、ちょうど良い湯加減。
七番湯「七繰(ななくり)の湯」
この勢いのまま、あと1つふたつ入浴しようと思い七番めのお湯へ。
六番湯までは、平日金曜とはいえ他の入浴者はおらず貸し切り状態だったけれど、こちら七番目のみ先客がいらっしゃった。
「だいぶ薄めたんですけど、まだ熱かったら足しちゃってください」と言われたお湯は、これまたちょうど良い湯加減で救われた気分。他の入浴客が居ないから、どの外湯も熱いものなのかと尋ねると、そんなことは無く、普段から渋温泉のお湯はどこも熱いらしい。
八番湯「神明滝(しんめいだき)の湯」
こちら八番湯も、かなり熱いお湯だった。
ただ、蛇口を全開にひねるとかなり勢いよく水が出るので、すぐに入りやすい湯温へ。
これで残すところあと1つとなったが、本日はここまで。九番目の「渋大湯(しぶおおゆ)」は明日の朝風呂にとっておくことにした。
渋温泉での晩酌は、居酒屋ちょっくん
旅行前の下調べをしているときに見つけて気になっていた、渋温泉街にある居酒屋ちょっくん。
グーグルのクチコミを読んでいるだけで楽しそうな雰囲気が伝わってきて、ここは必ず行きたいと思うように。
陽も暮れはじめ、明かりの灯った金具屋を観に行ってから居酒屋の前を通ると、すでに営業中となっていた。
こちらのお宿、金具屋という名前だけれども渋温泉を代表する歴史ある宿。創業当時は馬具や農具を作る鍛冶屋だったことが由来のよう。
ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる神様の温泉施設「油屋」に似ていると話題になり、ファンの聖地にもなったのだとか。
いつかは金具屋に泊まってみたいものである。
19時頃、居酒屋ちょっくんに入るとカウンターに先客が1名。30歳くらいの爽やかな青年(と書くと、自身も歳とったんだなァ)で、出張で埼玉からやってきているとのこと。
出張時の宿泊先はある程度自由に選べるらしく、そこで渋温泉を選択するあたりが、また渋い。渋温泉だけに・・・(どこかで一度、言ってみたかった)
そんな青年とひとつ間を開け、同じようにカウンターに着席。
「お腹は空いてるかえぇ?」という御主人の質問に、少しだけと答えると「答えになってねぇがよ」と、何故か注意される。
そして最初に出して頂いたのは、お味噌汁、肉みそと茄子、ピーマンの和え物とサバの塩焼き、3品。
ちなみに、どれもオーダーした訳ではない。
勝手に(と言ったら失礼だけれども)、目の前に置いていってくれるのだ。
そう、こちら居酒屋ちょっくんにメニューは存在していない。壁一面ところ狭しと色々なメニュー札が貼られてはいるが、実際に存在するのはこのメニューのみ。
「なんか」300円より~
お腹が空いたり、ちょっとしたおつまみが欲しくなった時、つまり頼み方はこうだ。
「ねぇマスター、なんかちょうだい」
実際にこういう頼み方はしなかったけれども、そういう仕組みらしい。
入店時、最初の1杯での話題は「安倍総理辞任」で、折しもちょうどこの日は辞任の速報が流れた日だった。千葉から長野まで、ただただ走り続けていたので、ちょっくんで初めてそのニュースを知った。
ちなみに酒席での政治批判的な話ほど、不毛で勿体ない時間は無いと思っている。
酔いながら批判したところで、翌朝起きたら景気が良くなっているなんていう話は聞いたことがない。実感できるのは二日酔いの軽い頭痛くらいなのだから。
どうせ飲むなら楽しく飲みたいものだ。いくつになってもね。
ご主人、昔からバイクに乗られているとのことでオートバイ話にも花が咲き。ご飯ものは上の素麺と、最初の3品。飲み物は生ビール2杯に、バーボンをロックで4杯、最後に泡盛ちょっとだけ。
お会計を訪ねると2,500円とのこと。ご主人、伝票も何も付けておらず、その時の気分的なもので値段を決めてるでしょ・・・
3,000円を渡し、お釣りの五百円玉は「ちょっくん募金箱」に入れておきました。
居酒屋ちょっくん、想像していたよりも控えめな楽しさだったのは何故だろう。クチコミレビューで勝手に期待し過ぎていたためだろうか。
ただ、ご主人の「(新型コロナ影響で)いろいろなことが5分の1になった」という一言に、思うところが大きかった。
こちら渋温泉、平日の金曜とは言え町中を歩いていても、すれ違う旅行客はほんの数組。外湯巡りをしている時も、ほかの入浴客と一緒になることがほとんどなかったことからも今は本当に観光客が少ないのだろう。
特に渋温泉は海外からの観光客にも人気ある温泉地のようなので、つまり5分の4というのはそのまま海外観光客が皆無になってしまっている状況とのこと。残り5分の1の国内観光者がそこまでお金を落としていくことも考え難いので、数字的な減り幅はもう少しだけ大きいのかな?と勝手に推測している。
ちょっくん、海外からの観光客もワイワイ楽しそうに過ごしているような時にまた訪れてみたい。
2020年、夏の長野ぐるり旅・その2はこちらからどうぞ。
2020年8月28日の道のり
走行距離:366km
長野に入るところまで上を使い、長野県内は下道をとことこ走る道のり。